「頼む、羽花。引き受けてくれないか?」


5月ももう少しで終わり。


体育祭に向けて初めてのホームルーム。

クラスの大勢の人たちの視線が、私に集まるのを感じる。


教卓の前では、必死な表情で、手なんか合わせちゃってる
幼馴染の広貴がいた。


私は、顔が赤く染まるのを感じながら戸惑う。


体育祭では、主に応援団とパネル委員が大きな仕事を行う。


1年生から3年生までの縦割り制だけど、応援団やパネル委員の中から
各クラス応援団長一名とパネル長一名を選出することなっている。



私達はまだ1年生だから、リーダーとなって活動するわけではないけど、
高校生活始まったばかりの私達には大きな仕事だ。



応援団長は、運動神経抜群の広貴が立候補し、満場一致で決定した。


そして、パネル長の選考に、美術部の私が推薦されたのだ。


はっきり言って、やりたくなかった。



地味で静かな私が、前に立って目立つようなことなんてできない。

他に絶対適任者がいる。



でも、広貴のその熱い視線と、周りからの圧力で、
断れるような雰囲気じゃなかった。


みんな、やりたくないんだ。

面倒臭いから。