「羽花ちゃん、パネルの方はどう?」

「もう直ぐ仕上がりそうです」


作品の上に四つん這いになったまま、太一先輩にそう答える。


5月も終わりに近づき、体育祭まであと3日。


時間も迫る中、私達の準備は夜まで続いた。


今日は佐倉先輩も新川先輩も用事があると言っていて、
私と梨沙だけでの作業だった。


梨沙はただのパネル委員で、実行委員の私達と同じ時間まで
残る必要はないけれど、私のために一緒に残ってくれた。


目の前には、鮮やかな赤色が目立つ、大きなパネルが広がっている。


主となる色は、全部新川先輩が作ってくれた。


あの後、「なんかごめんね」と声をかけてくれた。

太一先輩にあんな妥当なこと言われて、自分が恥ずかしくなったって。


そんなに思い詰めなくていいのに、と思ってしまった。


それで、新川先輩は体育祭終了後、太一先輩に告白するらしい。

今度はちゃんと、自分の気持ちぶつけたいって。


最近、モヤモヤした気持ちが心の中に留まり続けている。


「羽花、ここの色これ使っていい?」

「あ、うん。いいよ」


そう言って、私はパネルから遠のいた。


出来た。


パネルの中央では、ギョロッと鋭い目が、私の方睨んでいる。


今日はずっと、この目の調整をしていた。


勇ましい感じの目にしたくて、目の細さや色の段階を考えていた。