全部、先輩のせいです。

「俺は、羽花ちゃんって呼ぶ!」


は?


ズッコケそうになった私を気にせず、
太一先輩は続けた。


「よろしくね、羽花ちゃん」


いやいやいや。

羽花ちゃんはないでしょ。

小学生でもあるまいし。


えー、と苦い表情を浮かべる私に、先輩は「ダメ?」と
上目遣いで聞いてきた。


そんな先輩といると、なんだか『先輩』っていうより、『後輩』と
話しているような感覚になる。


昔から私は、甘えられると弱い。


「好きにしてください」


そう、冷たく言い放った。

それでも、先輩はニコッと笑った。


心の中が見破られたよう。

本当は、そうやって呼んでくれることが、ちょっと嬉しいと
いうことが。


「頑張れよ、絵。羽花ちゃんなら絶対選ばれるって」

「選ぶのは、先輩ですよ」

「そうだった」


惚けたように言う先輩を見ていると、自然と私も笑顔になっていた。

僅かなその笑い声が、静かな図書館に響き渡る。