「新入生怖がってるから、やめてやれよ」


そう、それよ。

私の気持ちを代弁してくれたその人に
心の中で感謝をする。


「ええー、いいじゃん別に。なぁ?」


全然良くない。


そう言いたかったけど、先輩に対してそんなこと言うのも
気が引けて、私は不満げな顔をわざとらしく浮かべた。


「嫌だってよ。ほら、太一はこっちこっち」


えーー、と言いながら、太一という先輩はその友達に
引っ張られていった。


「あ、最後に一つ」



だいぶ向こうまで連れていかれた先輩が、
大きい声でそう叫んだ。



「オレ、3年A組 池田 太一。よろしくな!」



その笑顔を見ると、なんだか全部許せるような気がした。

それくらい、先輩は笑ってた。


先輩からすると、たまたま通りかかった新入生が私だったって
だけかもしれない。


だけど、私にとっての高校生活、初めての思い出だ。