全部、先輩のせいです。

不意を突かれて、思わずビクッとする。


やっぱり。

太一先輩だった。


「今日も来たんですね」

「それこっちのセリフ」


そう言いながら、太一先輩は私の絵をまじまじと見つめてくる。


「広貴の言ってた通りだな。さすが穂波さんだね。
本当に上手いよ。これ、俺が貰いたいぐらいだよ」


どんどん褒めてくれて、流石に照れる。


「あ、ありがとうございます」


事務員さんを除いて、図書館には私と太一先輩二人きり。


別に太一先輩のことを意識しているわけじゃないけど、
その雰囲気が私を堅くさせた。


「思ったんだけど、」


何か、絵の感想を言ってくれるのか期待して、
太一先輩の方を向く。



「穂波さんって呼ぶの、なんか遠くてヤダな」


え?


いきなり的外れなことを言い出した先輩に驚く。


「いやー、さー。せっかく仲良くなれたんだしさ」


太一先輩は、考え込むような素振りを見せる。

私は、普通に穂波さんって呼ばれたので良いんだけど。


「広貴は、羽花って呼んでるよな」


それなら、と先輩は名案を思いついたとでも言うように
目を大きくさせて言った。