全部、先輩のせいです。

あ、先輩のこの笑顔。

やっぱり、あの時と変わっていない。


____先輩は、忘れてるみたいだけど。



「……古典集?」



ふと、先輩の持っている本に目を移す。

真っ赤な表紙の中に、シンプルに「古典集」とだけ書かれていた。


先輩にその本という組み合わせには、違和感がありすぎる。


そんな本読むんだ、意外だな。



と感心し、驚いているのを見て、先輩は慌てて否定した。



「いや、別に。これは、俺用のじゃなくて……。その……」


いつも思ったことをどんどん口に出す先輩が、
言葉を選んでいる様子がなんだか可笑しかった。


「親に頼まれて。おつかいみたいなもん?俺んち、ここから近いから」


言葉が見つかったからか、先輩の口調がいつもの様子に戻る。


どうしてさっき、迷ってたんだろう。


親におつかい頼まれた、ってのが恥ずかしかったから?

それとも、実はその本は自分のために借りようとしていたもので、
それがバレたくなかったから、嘘をついたとか?