春。


雨降りの中の入学式。


せっかく満開に咲いた桜も、呆気なく雨に流されていく。

昨日までは綺麗だと言っていたピンクの花びらを、
みんな惜しみなく踏んでいく。


なんだか人間関係に似ているな、と感じながら、
私は真新しいその靴で門をくぐった。


周りにいる新入生は、みんなキラキラしていて、
希望に満ち溢れていた。




穂波 羽花。



上手くやっていけたらそれでいい、
地味でいいから、傷つかないように過ごしたい。


それが私。



「……おーい」


下駄箱へ向かおうとする私の前に、
ひょっこりと一つ、大きな手。

その手を振りながら、その人は私の真正面に顔を覗かせ、
ニコッと笑った。



「入学、おめでとうございまぁーすっ!!」



誰?