そう言って離れるも、建物に入ってそのまま歩き続けるといつの間にか元の距離に戻る。


「こんくらいなら、ただの同僚の距離だろ?」




──今までの会話で察した人が殆どだと思うが、俺達は恋人だ。男同士の。



この関係について恥ずかしいとは思わないが、なるべく知られたくない。



コソコソと付き合っているこの関係がもどかしくもありつつ、周りからの変な目もないので居心地がいい。



告白してきたのは土田だが、今では俺も土田の事が好きだ。



だからこそかどうかわからないが、週のほとんどの仕事終わりは土田と過ごしている。


ふたりとも一人暮らしだから気楽なもんだ。



飲むこともあるし、飲まずにそのまま寝るってこともあったりする。


ひとまず、お互いがしたいように過ごしている。



そんな生活が崩れようとしたのは、仕事が終わったあと、俺の家で飲んだ時の土田の一言によるものだった。