「...はよ」


「あぁ、おはよう、田嶋」



会社に行く途中、いつもと変わらない笑顔で挨拶をする土田。


その笑顔に心臓がキュッとするのは、絶対に土田に言わない。言ったら絶対調子に乗るから言わない。



大体、20ちょい過ぎのおっさんがときめくって何なんだよ、我ながら気持ち悪い。




「田嶋、今日飲む?」


「ん?あぁ、いいぞ
俺んちでいいか?」



手首をクッと曲げて酒を飲むポーズをする土田。


断る意味は無いからもちろんいい。



「もちろん!そこがいい」


「なんでだよ...狭くて何もないぞ」



目を輝かせて言う土田に俺がそう言うと土田はニヤニヤしながら



「田嶋の匂いがするじゃん」



と言った。



「やめろ」



条件反射で言葉が出た。


多分、異性のカップルもそんな事言われたらこう返すと思う。



「えー、なんで?」


「なんかやだ」


「なんでだよー、俺ら恋人だぞー?」



恋人だからってその発言は許されるのか...?




「って、バカ、外で言うな!」


「なんでそんなに隠したがるんだよ~
田嶋ったら照れ屋さん」



小声で言って肘でつついた俺を見て、土田は相変わらずのニヤニヤ笑顔でこう言う。


土田の目...どっかでイカれてんじゃないのか...?



「気持ち悪い声出すな土田
ほら、もう会社ついたんだから離れろくっつくな」


「はいはーい」