――那くんと離れなくてすむんでしょ…?
「っ、ごめんなさい!」
……私はどれだけ汚くて嫌な子なんだろう…。
家族みんなで住む方がいいに決まってる。
どれだけ遠くにいても、家族なんだからなんて言えるほど、私も那くんも大人じゃないのに…。
一緒に、家族と一緒にいたほうがいいに決まってるのに…っ。
浮かんだ涙は、私の意志とは関係なく自分の膝を濡らしていく。
「…っう…」
「さ、」
「幸」
堪え切れなかった嗚咽を聞いた那くんが私の名前を呼ぼうとしてくれたけど、力強い那くんママの声にかき消されてしまった。
俯いてはいられなくて、涙をそのままに顔を上げる。
私の目の前には声の強さとは反対に、すっごく優しくて、綺麗な顔をした那くんママがいた。
それでも、怒られる、そう思いギュッと目を瞑った私の頭に優しい温もりが触れた。
「ありがう…幸」
「…えっ?」
「那を、ここまで想ってくれててありがとう……」
「…っ那くんママ…違っ…!」
違うの。私は、私が寂しいから。那くんと一緒にいたいから、だからっ…。
そう思うのに、那くんママに遮られ、何も言わせてもらえない。
「幸、那。あたしはね、那の好きなようにすればいいと思ってるわ。だって、那の人生なんだから」
「っ母さん…」
「那が幸を大切に想ってることを知ってる。だから、一緒に来てなんて言わない。
それでも那が一緒に行ってやるって。
母さんと父さんと朱と、もう一度だけでも一緒に暮らしたいって思ってるなら、くればいいと思ってる。
……だからね、全ては那次第、かな」
そう言って私と那くんに笑いかける那くんママはやっぱり、すごく綺麗だと思った。


