「……幸は?」
「…っ、……」
「俺が海外行ったら、どう思う?」
「……っ」
那くんが海外に行っちゃったら、もう毎日は会えなくて。声だって聞けなくなって。
何より、大好きな那くんの体温を、笑顔を感じれなくなっちゃう…。
そう考えただけで涙が溢れそうになる。
………それくらい、嫌だよ…。寂しいに決まってるよ…。
だけど、そんな事言えるわけないから。
「……那くんの好きな様にしていいと思う…」
「…俺は、幸と離れたくない」
「……っ、でも!」
「でも、朱の事も、父さんと母さんの事も心配で…」
揺れる瞳は、私を見てはくれない。
初めてだね。こんなに那くんと目が合わないの。
だけどそれくらい、那くんにとっても、私にとってもお互いが大切な存在なんだって感じられる。
那くんとなら大丈夫だって思える。
「私は、大丈夫…だから…っ!」
「……幸っ、」
「那くんを嫌いになんて絶対なれないし、別れるなんて選択肢も絶対考えられないから……だから…っ…」
――だから、そんなに泣きそうな顔しないでほしいの…っ。
那くんの笑顔が大好きだから、ずっと笑っていて欲しいの…。
泣いたりしないで。涙なんて見せないで。
那くんの笑顔は、周りの人を優しい気持ちにしてくれるから。
私は、そんな那くんが大好きなの。
「那くん以外の人を好きになるなんて、考えられないもん…」
「……うん、俺も。幸以外の女とか女じゃねぇよ」
「ふふっ、それは誰のことを言ってるんだろうね?」
「……月しかいねぇだろ」
「そんな事言ってたらチクっちゃうからね!」
「それはちょっと勘弁。面倒くさそう」
そう言いながら笑う那くんの笑顔がやっぱり好きだよ。
那くんの笑顔を見れただけでこんなに胸が苦しいんだもん。
大丈夫だよ、私たちなら。


