いつだって凛としてて、真っ直ぐ前だけを見てる那くんの瞳が、今日はとても不安そうに、揺れてるのが分かった…。


何か言わなくちゃ……。


言いたいことも、聞きたいことも、思いつくことだって沢山あるはずなのに、どうして何も言えないんだろう…。


どうして全ての言葉は、喉に引っかかってるんだろう……。


戸惑う私の手をギュッと握り返してくれた朱ちゃんに視線をやれば、不安そうに「大丈夫?」って聞いてきてくれた朱ちゃん。


――子供ってこんな雰囲気を感じ取っちゃうものなのかな…。


なんだか申し訳ないね…ごめんね、朱ちゃん……。



「那くん」

「…ん?」

「朱ちゃんがね、私と那くんの3人で遊びたいんだって」

「……そっか。 よし、朱!お外行くか!」



朱ちゃんに目線を合わせてそう言った那くんを見て朱ちゃんは嬉しそうに、大きく頷いて那くんに抱き着く。


そんな2人も見てる私と那くんパパも思わず顔が綻んだ。



「幸、行くぞ」

「わっ!」



那くんに手を引かれて階段を下りていく私は那くんパパを見たけど、どこか傷付いた顔をしてることしか分からなかった。


……本当は2人で話したいことがあったんだけどな…。


そう思ったけど、それはきっと、那くんが自分から話してくれるって思ってるから。


だから今はまだ、本当のことを聞かなくていい時なんだと思う。


せめて今は目の前の愛しい人と、同じ時間を共有していきたいと思うよ――…。



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