客室、かな?
そう思いながらドアを開けようとした時。
「――…だから、那にも来て欲しいんだ」
「無理だって。俺にも大切なもんがあるんだよ…!」
「幸も一緒に連れて行けばいい話だろ?」
「……ふざけんなよ。幸にだって幸の考えが、夢があるかもしんねぇだろ…っ」
「幸の夢はお前のお嫁さんだろ?」
「いつの話をしてんだよ! 俺たちはもう父さん達が思うほど子供じゃねぇんだよ!!」
「いずれにしろ! この休みが終わるまでには考え纏めておけよ」
「っおい! まだ話わ終わってなっ――……幸…っ!」
「………あ、えっ、と…」
那くんパパが扉を開けたことで、私と朱ちゃんに気付かれた。
しまった。どうしよう。どうすればいいんだろう…。
そんな焦りと共に、何がどうなってるのか理解できない自分がいて。
何…いったいなんの話をしてるの…?
ねぇ那くん。
那くんはどこかに行っちゃうの…?
那くんパパ達は、那くんをどこに連れて行きたいの……?
私と那くんは、もう一緒にいられなくなっちゃうって事――……?
気まずそうな顔をして俯く那くんパパ。
立ち竦む私の足元で小さく那くんを呼ぶ声がして、ハッとする。
「…お兄ちゃん…? パパ…?」
「……っ、朱」
朱ちゃんの声で我に返ったらしい那くんは、バツの悪そうな顔を私に向けてくる。