………ったく、もう…。
お母さんが私を、那くんを心配してくれてるのは分かってる。 分かってた……。
多分それはお父さんもなんだろうけど、お父さん以上にお母さんが心配してくれてるって、心のどこかで気付いてた…。
お父さんにとって那くんは可愛くて可愛くて仕方ない存在だって事を私は知ってる。 私と同じように、同じ気持ちで那くんを大切にしてくれてることだって知ってるよ。
お母さんもそうでしょ?
そう尋ねればきっと、「当たり前じゃん」って言ってくれる事も気付いてるの。
だけどお母さんだから、女だからこそ、私のことを別の意味で心配してくれてる事も分かってるよ。
視野を広げることが大切、かぁ――……。
私の視野は狭いかな? 那くんしか見てこなかったから?
那くんしか目に入ってないから?
お母さんの心配は嬉しいけど、正直どうしようもないと思ってる。
私を大切に思ってくれてるからこその言葉なんだろうけど、私には那くんが必要なんだもん…。
「こればっかりはどうしようもないよね……」
独り言は空気と共に消えてなくなる。
私の那くんに対する想いも、空気みたいに溶けてなくなっちゃったりするのかな……。


