僕には才能がない。

運動も、勉強も、芸術も、文学だって。
どれもうまくなくて、どれも中の下以下。
『これこそは』ってやってみるけどダメで、努力したって才能には勝てなかった。
美術部に入って、絵が上手いフリをしてみた。練習だって頑張った。でも才能には勝てない。諦めるしかない。
 自分より下を見て安心して、上を見て羨望する。いつか追い越されるという不安と『頑張らなきゃ』という焦燥。1位なんて取ったことがなくて、『順位なんて関係ない』みたいな綺麗事聞いても焦っちゃって、もう頑張る気もなくなって。 
 クラスには運動がうまくて、頭も良くて、みんなから慕われてる人がいる。羨ましいのに、人に話しかけるなんて無理で、『一人の俺カッコいい』とか思ってる。ほんとは羨ましがりで、バカで、嫉妬深くて、嫌になる。
素直になれず、友人を下に見ていて、ふざけて手をあげる。そんな自分が人に好かれる訳もなく、影で悪口を言われてるだろうと思う。自分を全員が『お前は生きててはいけない』と、自分を責めてくれたら、迷わず死ねるだろうと考える。何回も他人に迷惑をかけて、バカやって、そのたび怒られて、存在しなくても誰も悲しまないって泣く。そして繰り返す。
 誰かに求められたい。でも才能はない。人に好かれる性格でもない。自分の存在意義は?生まれた意味は?『意味なんていらない』なんていうけれど、僕は人が人を殺すより、人が意味無く生きていることの方が悪に感じる。なんの役に立たなくて、二酸化炭素を出す。食糧と酸素の無駄。ただただ生きてるだけ。殺人犯は人を殺すことに存在を見いだした。なのに。
 死ねばいいんだ私なんか。必要性のない、ただの他人を着飾る装飾品。無意味な存在。



 私には才能がない。