数日後の夜。
女子寮の窓から抜け出す人影があった。
俺は気付かれないよう後をつける。

「また会ったわね」
その女は突然くるりと振り返る。
月明かりに照らされた、あの顔。
「また会えたな」
不破翔子はふふ、と笑った。
その体を抱き締めようと手を伸ばす。
と、右手に痛みがはしった。

「あたしを捕まえる気?」
ペインティングナイフを突きつけながら笑う翔子。
「俺も晴れて、通り魔事件の被害者の仲間入りか」
「それはないと思うわ」
妖艶な笑みが近づいてくる。
「昼間のあたしが、神威くんに惚れちゃったみたいよ」
「やはり二重人格か」
「犯罪史ではそう珍しくもないかしら?」

赤い唇が俺の口を塞ぐ。
「あなたのキスで翔子は恋に落ちたのよ」
「お前はどうなんだ?」
彼女の身体を引き寄せ、俺も口づけかえした。
「あの子はあたしのことを知らない」
「俺は今のお前が好きだ」
舌を入れると、彼女のほうから絡みついてくる。
先日の昼間とは違う、俺を虜にしたキス。
脳をかき回されるような快感に耐えながら、また消えてしまわぬよう翔子を抱き締める。

「これじゃシゴトに行けないわね」
「行かせない。通り魔などさせるか」
白い首筋に唇を這わせる。
制服スカートの中に手を入れ、下着をずらす。
「せっかちね。神威くんらしくない」
「何とでも言え」
焦りで絡まる指先で、滅茶苦茶に愛撫する。
それでも翔子はわずかに濡れてくれたようだ。
壁に手をつかせ、背後から下半身を押し付ける。
「今夜はこっちのほうが楽しそうね」
「ああ。楽しませてやる」
俺自身を秘所に当てがい、ねじ込んでいく。
「だから、どこへも行くな」
「ん…」
翔子の唇から熱い吐息が漏れる。
きつく締まったそこに奥まで沈めてから、ゆっくりと腰を動かす。
「神威、くん」
「翔子。好きだ」
肌がぶつかる音が夜空にこだまする。
そのまま二人して同時に果てた。

(しまった。中に出して…。)
翔子は絶頂とともに気を失ったようだ。
ハンカチで精子を拭き取り、抱き上げる。
裏口から入れば、女子寮の部屋まで送れるだろう。