「昨日のあれは何だ?」
すれ違いざま、いきなり神威冬馬に壁ドンされて詰め寄られる。
「な、なんのこと?」
「とぼけるな」
彼は眼鏡を外すと、その形の良い唇を私の唇に重ねる。
「んうっ!?」
視界がピンク色に染まる。
(これは神威くんの念?)

あまりの気持ち良さに、ついとろんとしてしまった。
「や、やめて」
いちおう抵抗してみる。
彼のオーラが複雑な紫紺に変わる。
「不破、昨夜はどこにいた?」
「え?昨夜って…。普通に寮の部屋で寝ていたわ」
神威は少し考え込んでから、ぽつりとつぶやいた。
「ありえない話ではない、か」
そのままスタスタとどこかに行ってしまった。