駅にいた人々はみんな流れるようにして、改札口に向かっていてあの日みたいに誰も足を止めていなかった。


「傘を探しているのですか?」


その声が聞こえた途端、宝箱がそっと開いて、ちゃんと記憶は色づいて私の中に帰ってきた。

振り向いて、私はにっこり笑った。


「うちまで送ってくれるんでしょう?」

「相変わらず、強引ですね。わかりましたよ」

やれやれ、と肩をすくめた彼は今度こそ自然に笑ってた。



end