私はまだその温もりが離れ切らないうちに先生の手の甲に自分の掌を重ね、もう一度その温もりを頬に戻す。



「南条…?」



「私!寂しくなるかもしれないし、生活のことも困ることもあるかもしれないけど大丈夫。怖い人には気を付ける。

でも…



先生のこと、私は忘れたりはしないよ?

私には先生だけだよ!」



「……」



「それでももし先生が心配なら…」



私は頬で重ねた手をきゅっと握り締めると、そちらにそっと顔を向ける。

そして眼の前の先生の掌にそっと口付けた。



「絶対離れないって…



約束のキスをしよう…?」



「…南条!?」



私は先生に微笑む。



植物園の夢のように煌めく青の中で、先生の瞳が、唇が近付いて来た時、私は期待した。

先生と私は気持ちが通じ合っても、『教師と生徒』というどこか余所余所しい関係は解き放つことは出来ない。

でもこれで一歩、私は先生のものに、先生は私のものになれるような気がした。