「んー…でもなぁ…」
「だって先生。私、好きな人と過ごすクリスマスって初めてなんだよ?初めては一生に一度なんだよ?」
先生の顔を覗き込んで食い下がる。
「っ…!
色仕掛けは反則!」
「?」
「分かった!分かったからこんなとこでその顔やめて。」
首を傾げる私を先生はぐいと押しやる。
そして、
「24日、イルミネーション行こう。
その代わり、帰宅時間は10時厳守。
必要に応じてお兄さんに送り迎えしてもらうこと。
いいね?」
と、「教師」の顔で言った。
「はいっ!
先生ありがとう!!」
私はもう嬉しくて嬉しくて嬉しくて。
本当は先生に抱き付きたいくらいだったけれど、遠慮して先生のパーカーの袖をぎゅーっと引いた。
「あ!おい…!」
先生は「はぁー…」と深い溜め息をついて、袖を掴む私の手に自分のそれを重ねる。
そして指と指を絡めるようにして袖から手を引き離す。
(あ…)
引き離されたのに、でもしっかりと繋がれた手に却って胸がときめかされる。
触れあった指から掌、胸、頬へとどんどん熱が伝わったかのように熱くなる。
「そういう可愛いことするのはまた今度、ね?」
「…はーい。」
(また『今度』、ってことはデートの時ならいい、のかな…?)
先生の手が一瞬きゅっと私を包むように握られ、それからそっと離れた。
「ごめん南条。今日はちょっと急用が出来て。」
「あ、じゃあもう帰るね。」
「うん。」

