ほぼ雑用だらけのこの部署で、和気あいあいと仕事してきた。
安月給だけど、競争とか、蹴落としあいとかに無縁で、マイペースでやってきた。

「発注書、できてる?」
「はい。」

うーん…。
できていないじゃないか。

「あー、社長室の芳香剤はラベンダーにしてね。ラベンダー以外は嫌いみたいでね。」

頻繁に変わる派遣社員に、社長の趣味なんか知ったことじゃないよな。

「それと、トイレットペーパーも追加ね。あと、マゼンタとブラックのカートリッジも発注しといてね。」

発注先の会社名、間違えてるし。
結局、自分でやったほうが、早いんだよな。

最近、俺、イライラしてるな…。

「A定食ね!お釣り、520円。」
うん。なかなか、いけるな。
これからは毎日、ここの定食A、B、Cと日替わりをローテーションで食べよう。
彼女の弁当、もう作ってもらえない。
俺、料理はからっきし出来ないからな。

毎日、ほぼ定時で退社していたが、残業したい気分だ。
家に帰っても、やることがない。

上京して3年目、フリーターをしていた時、出会ったのが彼女だった。
付き合うまで、そう長くかからなかった。

今の会社に就職出来たのは、彼女が励ましてくれたからなんだよな。

誰かに愛されてるという事実は、自信が出るし、すごく、頑張れるんだよな。

失ってみて、分かるよ。

家の中が、まだ、彼女の匂いでいっぱいだ。
写真も、貰った手紙も、旅行先で一緒に買ったお土産もそのままにしていた。

だけど、
全部、捨てよう。

今までの思い出、彼女から貰った愛情、人を愛する気持ちを、心の中にだけ残して、全部リセットしよう。

今まで、ありがとう。