夕方。


駅から飛び降りると、海へと繋がる堤防の階段を駆け上がる。

ふうっとため息をついて海を眺め、穏やかな笑みを浮かべる。



はーっと手に白い息を吹きかけると、座り込んで空を見上げる。

赤色の空は励ましの赤。

嫌なことなんか、全部燃え盛って消えてしまうよう。

寒い風も、冷たい海も、

この時間ばかりは暖かく見えるのだから不思議ものだ。

ふふっと小さく笑い声を漏らすと、


「今日も一日お疲れ様です、私。」


と、おどけたように独り言を漏らした。



私、橘 結希(Tachibana yuuki)は高校一年生。

やや小柄で黒髪のふわっとしたボブスタイルが特徴だ。

目元には泣きぼくろがあり、小動物を思い起こさせるような瞳。



そんな私は小さな頃から地元の自然を愛していた。

こうやってただただ空を眺めることが好きだった。

心が浄化されていくような、ふわっとした感覚が好きだった。



ゆったりとした時間を楽しんでいると、ふいに携帯がなる。


“ 早く帰ってきなさいよ! ちなみに、今日の晩御飯はカレーです“


母からのメール。再び笑みを浮かべると、よっこいしょ、と立ち上がる。