春の訪れを感じるような、小鳥のさえずりを聞きながら目を覚ます。


なんて、起き方を私は一度もしたことがない。
私の1日の始まりは、




「こらー!!桜!!さっさと起きなさい!!」




毎日、この母さんの声から始まる。




「んんっ、今起きた〜」




寝起きで舌の回っていない声で返事をして、のそのそとベッドから出る。


2階にある自分の部屋から、1階に降りて洗面所で顔を洗う。
そのまま、隣にあるトイレの扉を開けた。




「うぉっ」

「あ、ごめん!」




開けた扉を、直ぐに閉めた。
先客がいた…。


っていうか




「お兄ちゃん、朝から大きい方!?最悪!」

「はぁ!?朝にするのは良いことなんだぞ!多分!」

「多分でしょ!?それにお兄ちゃんの場合、ただの便秘でしょ!」

「違うわ!」

「あんた達、朝からうるさいよ!!」

「ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」




朝から、嫌なものを見て、言い争っていると最終的に母さんに注意されて終わった。

これも、いつもの日課だ。

ちなみに、私の家は、母、父、兄、そして私のごくごく普通の4人家族だ。

父の夏原 健司は、仕事でいつも朝が早い。
なので、朝に家の中で見るのは休みの日くらいだろう。

母の真由美は、専業主婦でいつも家にいる。
口うるさいとはよく思うが、とても良い母親だと思う。

そして2つ上の兄、隼斗は高校3年生で成績も良く、部活でやっている硬式野球は毎年甲子園にも行っている強豪だ。
それに加え、顔の整っている母さんと父さんから産まれただけあって、なかなかのイケメン。さらに、性格はリーダータイプで、とても気遣いができる優しい人柄だ。
これがモテないはずはない。

そして、そんな完璧な兄の妹が私、桜だ。
今年、お兄ちゃんと同じ高校に入学したばかりのピカピカの1年生。
成績、普通。顔も、普通。運動神経に関しては、皆無だ。
とても、あの夫婦から産まれたとは思えない程、平凡な私。

そんな私には、普通じゃない家族にも絶対に言えない秘密がある。


私は、そんな完璧なお兄ちゃんのことが

家族としてではなく、

1人の男の人として、ずっと好きなのだ。



それが、私の死ぬまで明かしてはいけない

大きな秘密だ。