遥斗side
一言も喋らない目の前の女の子。
いや…、単語くらいは喋る。
彼女と出会ったのは、数時間前。
自炊をしない僕は、スーパーにカップラーメンを補充しに行っていた。
帰り道フラフラと傘もささずに歩く女の子の姿が目に入り、気づけば彼女に声を掛けていた。
それに靴も履いていなかった彼女。
夏なのに長袖の服。
気になることは多々ある。
そんな彼女を俺は家に連れ込んでしまった。
第1印象は無口な泥だらけの捨て猫。
でもお風呂から上がった彼女を見て、心臓がドキッと跳ねた。
泥まみれだった砂は落ち、半袖の服から伸びる透き通るような細い腕。
腰まで伸びた、痛みを知らない綺麗な黒髪。
一瞬見惚れた。
でも彼女の透き通るような白い腕には似合わない、青く痛々しいアザがあった。