「はるっ…苦し…」
私がそう言うと、遥斗はゆっくり唇を離した。
それでも頬、おでこ、首筋。
色んな所に、キスを落とす。
少し心がくすぐったかった。
嬉しくてその日、初めて嬉し涙を流した。
しばらくして私の退院日が訪れた。
「先生、お世話になりました。」
そしてこれから泉家でお世話になります。
あの後、遥斗から聞いた話。
親の居ない、親戚にも引き取って貰えない私を遥斗が一緒に住めば?と言ってくれた。
今、香織さんの車で向かっている遥斗のマンション。
部屋の荷物と言っても、私が出ていってからお義母さんが捨てたのか
殆どの服はズタズタ、荷物も無くなっていた。
でも辛くない。
なにも。
私には遥斗が居る。
良くしてくれる、遥斗のお姉さんの香織さんもいる。
遥斗の友達にも仲良くしてもらっている。
あの頃の私じゃない。
もぅ独りじゃない。
「稚己、着いたよ。」
「うん。」
遥斗の言葉に私は車から足を下ろす。
今日から始まる私の生活。
まだまだ輝いていけることを信じて。
end...