「稚己…。」



遥…斗?



1度寝た振りをしてしまえば、目を開けるタイミングを失う。




優しく私の髪を撫でる遥斗。



無言で何も言わず髪を撫でたり、手を握ってきたりする。



でも遥斗がどんな表情をしてるかなんて、私には分からない。





そしてたまに呼ばれる名前。




遥斗の一つ一つにドキドキと心臓が音を立てる。



髪を伝って、遥斗に気づいてしまうんじゃないか…なんて。




「稚己…。俺ほんとアイツの言う通りヘタレだよ。」




と、何やら…独り言?




それにそのアイツってまさか…。




思わず頬が緩みそうになる。




絶対啓悟くんのことだろうな。




私は頬が上がらないように、心の中で笑った。





「こーやって稚己が寝てる時にしか、言えないし触れない。」




…遥斗。




今遥斗がどんな表情をしてるかなんて、私には分からない。



ただ遥斗の切なそうな声に、目を開けそうになる。





「好き。稚己。」