啓悟side
稚己ちゃんのあの姿を見て、流石に俺も黙ってられる程大人じゃなかった。
久しぶりに見た、遥斗の泣いている姿。
病室を出ると、既に事情聴取を受けていた稚己ちゃんの親。
「うっうぅ…。最近稚己は家に帰ってきてませんでした…。もしかしたらその人の家で暴力を振るわれていたのかも…。それに気づかないなんて…母親失格です…っ。」
ほんと嘘泣きも大概にして欲しいな。
俺は刑事さんと稚己ちゃんの親の間に割って入った。
「初めまして。俺、稚己ちゃんの友達の生田 啓悟って言います。」
横では俺を睨む稚己ちゃんの親。
「稚己ちゃんは、俺の友達の家で笑って過ごしてましたよ。それに、アイツもそんなことする奴じゃない。」
それでも嘘泣きを続ける稚己ちゃんの親。
「そんなの一緒に居なかった貴方に、1日の行動全て分かるの!?私の稚己を自殺に追いやった様なやつの言う事なんか、聞かないで!刑事さん!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい。」
「これが落ち着いていられますか!!私の娘が…。」
はぁ…。
ほんとここまでだと、嘘も褒めたくなるよ。
でも俺にはさっきの会話があるんだよ。
