俺より先に病室に手をかけた啓悟。
本当にアノ稚己かは分からないが、あんな親…。
俺は啓悟の後に続き、足を踏み入れる。
ーーピッーーピッーー
その部屋には誰1人居らず、機械の規則的な音だけが静かに響いていた。
「稚己…。」
「稚己ちゃん…。」
やっぱり稚己だった。
いや…でももしかしたらっていう期待もしてた。
結局…。
俺は眠っている稚己の手を取り、ギュッと握りしめて…泣いた。
涙でぼやける視界。
「稚己っ…。」
病室に入った時に見た稚己の姿は余りにも酷かった。
腫れた左頬。
病院服から伸びたアザだらけの細い腕。
顔にも腕にも付いているいくつもの切り傷。
他の誰かならなんて考えてはいけないことかもしれないけど…こんなふうな再会なんて、したくなった。
暫く立ちすくんでいた啓悟は病室を出ていった。
