「稚己ちゃんってさ。もっと笑った方がいいよ?可愛いのに仏教面だと、もったいないよ。」
私の髪の毛をスッとすくい上げ、チュッと髪の毛にキスをする啓悟さん…。
不覚にもドキッとしてしまった。
ーーバキッ
突然の鈍い音に、啓悟さんノックアウト。
「はっ…遥斗!?なんで殴っ…」
「稚己。ちょっと来て。」
と腕を引かれてリビングまでやって来ると、フワッと遥斗の香水の臭いに包まれる。
「他の男に何触らせてんの?」
抱きしめる腕が強くなる。
「遥…」
「啓悟にされたの…ドキドキした?」
シーンとしたリビングに響く私達の声。
「遥斗?」
「いいから答えて。」
なんか…怒ってる?
「うん。ドキッとはしたよ?あんなこと言われたのも、されたのも初めてだし…。」
「ふーん。」
聞いてきたくせに、この反応。
「じゃぁ、私戻るね。」
離れようと胸を押すと、直ぐに引き戻される腕の中。
「ダメ。ここにいて。」
ギュッと強く抱きしめられると、何故か抵抗出来ない…。
ううん。
したくない。
でも直ぐにパッと離され、『嘘だよ』なんて笑いかけてくる。
でもあまりに苦しそうで…悲しそうだった。
「遥…」
「俺、人を好きになったのは初めてだよ。」
それだけ言うと、頬にキスを残して遥斗は部屋に戻った。