そのまま寝てしまって、気づくと辺りは真っ暗だった。
携帯を操作して音楽を消す。
するとお母さんからメールが来ている事に気づく。
お母さんもお父さんも仕事で遅くなるそうで夜は適当にと言う内容だった。
夜ご飯作るのめんどくさいなー。
料理が苦手な私はコンビニに出かけた。
好きなシュークリームとカップそばを買ってコンビニを出る。
すると、運悪く、柄の悪い人達とぶつかってしまった。
「いったー。てめぇ!慰謝料よこせよ」
「ごめんなさい!」
私は深々と頭を下げる。
「そんなんじゃ済まねーぞ!」
これ以上どうしろって言うのよ。
ほんとこうゆう奴らは、バカばっかり。
「結構、かわいいじゃん」
そう言って私の肩を抱く一人の男。
「ねぇ、一緒に来てくれたら許すけど?」
は?
「よし、行くぞ!」
なんでその流れ?
ていうかピンチじゃない!
「離して!」
「いいから、いいから」
誰か!
そう思っていると誰かに握られてる手と反対の手を握られ、引っ張られる。
「ごめんなさいね。お兄さん方。この子僕のなんで」
「男持ちかよ…」
そう言ってどこか行ってしまった。
「大丈夫?」
その声は私のよく知る声だ。
「橋本翔」
そう、助けてくれたのは橋本翔。
そして、手首を握られてる事に気づく。
その手を思いっきり振り払う。
「これも作戦…?」
「え…?」
「これも私を部活に入れるための作戦なの?
そうなんでしょ?」
「何言ってるんだよ?」
「もぉ、やめて…ほんと、いい迷惑。」
なんだか涙が出てきた。
橋本翔に見られないように早足で歩く…
でも、私の足音の後に別の足音が聞こえる。
「ついてこないで」
私は前を向いたまま言う。
でも、ずっとついてくる。
そして、また手首を掴まれる。
「離して…」
泣きそうになっているのを見られたくなくて前を向いたまま言う。
「ねぇ、なんで泣いてんの?」
「泣いてなんか…?」
「目に涙溜まってるよ」
そう言われて目を人差し指で拭うと確かに指には水があった。
泣いた事がバレた。
そう思うとなんで泣いてんのを見られたくなかったのかわかんなくなって、見られないようにしてた自分が馬鹿みたいに思えた。
「ごめんなさい。さっきはひどい事…」
「ううん、あんな事、ほんとは言いたくねぇんだろ?」
「うん…」
なんでこんな素直な言葉が出るの?
いつも人の顔色ばっかり気にしてるくせに…
自分じゃわからない感情に戸惑う。
「昔からなの…素直になれないのは…」
なんでこんな事を言っているの?
橋本翔の事、嫌いなのに。
なんでこんなにおちつくの?
「あ!」
「何?」
「これ、これ!」
「何よ」
「これだよ。このシュークリーム」
橋本翔の指差したのはさっき私が買ったシュークリーム。
「あぁ、食べる?」
私はシュークリームを差し出す。
「え?でも…」
「いいのよ、さっきのお礼」
「じゃあ、もらうね」
「うん!」
そう言うと橋本翔は不思議そうな顔をしている。
「何?」
「いや、せつなちゃんのそんな笑顔初めて見たなと思って」
え?
確かに今何も考えずただ笑ってた気がする。
「おぉ、なんかわかんねーけど嬉しい!」
そう言って橋本翔は太陽のような笑顔ではしゃいでいる。
いいなぁ…
私もこんな風に感情を素直に出したい。
この人となら…一緒に…
え?
私、今、何を…
橋本翔となら何?
「せつなちゃん?」
「な、何?」
「いや、難しい顔してたから」
「別になんでも」
「そう、じゃあ帰るわ」
「うん、バイバイ」
そう言って来た道を戻って行った橋本翔の背中を見送った。