喜びの音色も悲しい音色も全部キミと

「せつなちゃんの心、変えてやるから」
そればっかり頭の中を回る。
なんなのあの自信。
「あれ?せつな、まだ帰ってねぇの?」
「直斗くん」
「どうした?なんかあったのか?」
「ううん、ただクラスの人と話してただけ」
ただのクラスメート。
きっと私と彼の関係はこれから進展する事はない。
絶対。
「じゃあ私、唯待たせてるから」
そう言って直斗くんの横を通り過ぎたら…
「せつな」
直斗くんが後ろから私の事を呼んだ。
「何?」
「お前、もうクラリネットやんねーの?」
「うん、勉強に専念するわ。ここもギリギリだったし」
「そうか。」
「うん、じゃあ、バイバイ」
「また明日な」
直斗くんと別れて玄関に着くと…
「どおーだった?告白は?」
「全然」
「なにそれ?会話成り立ってないよー!」
「告白じゃなくて部活の勧誘よ」
「はぁ?もぉ橋本くんってば紛らわしいな〜完全あれは告白だと思うって!」
「橋本って言うの?あの人」
「え〜⁉︎せつな知らないの?」
「知るはず無いじゃない。だってあった事無いんだもの」
「え〜、結構噂の人だよ。スポーツ万能。成績優秀。モデルみたいなスタイルと顔。それなのに中学校時代は吹奏楽部って言うギャップ。もぉ超超ちょ〜スーパーイケメンなんだから」
「ふーん。ずいぶん詳しいわね。唯。もしかして狙ってる?」
「まさか!私の好きな人は橋本くんじゃなくて…別の人…ヤバ!」
「ふーん。」
「嘘!嘘だから!」
「誰にも言わないわよ」
「さすが、せつな!」
唯が笑ってるとなんだか嬉しい。
「橋本くんって下の名前はなんて言うの?」
「確か、翔(しょう)じゃなかったかな?」
橋本翔。
いい名前ね。
だけど性格があれじゃ…
そう思ってお母さんの車に乗った。
「ただいま」
両親、共働きで、お母さんもこれから仕事だから何も返ってこないけどなんとなく言うのが日課だ。
自室に行って部屋着に着替えてベッドに横たわる。
直斗くんに嘘ついちゃった…
『ここもギリギリだったから』
違う。
高校はライン200点に対して私のとった点は…
235点。
勉強に専念するなんて言い訳。
ただ部活をしない口実…