コンクールの曲はやっぱり所々難しくて一筋縄では行かなかった。
だけど、練習は結構楽しかった。
先輩たちのアドバイスをもらったり、雑談したりして、なんだか落ち着ける。
そうしているとあっという間に部活終了の時間。
「今日で、1年生、2人、テストに合格し、合奏に入れるようになった」
2人?
私の他に誰か…
「吉原、橋本。おめでとう」
翔くんと私か…
そう言えばなんかやってるとかどこかで聞いたっけ。
「せっちゃん!やっぱり上手いんじゃん」
翔くんに話しかけられた。
「まぁ、一応やってたし」
そう言えば…
「翔くんって何の楽器なの?」
「俺はトロンボーンだよ」
ふーん。
なんかわかんないけど合ってるじゃない?
楽器を片付けて玄関に向かう。
桜がまだ色づいてる。
すごく綺麗。
そう思って、携帯のカメラを向ける。
うーん…
私は身長が低いから、いい距離で撮れない。
カシャ
そう一生懸命になってたらどこからか、シャッター音が聞こえた。
隣を見るとニヤニヤしてる翔くんがいた。
「何やってるの?せっちゃん」
「別に」
「桜、撮ってるんでしょ?」
見られたか。
「撮ってあげる」
そう言って翔くんは桜に手を伸ばす。
「はい、どう?」
差し出された写真はとても綺麗だった。
でも…
「これって、あんたの携帯で撮っても、意味ないじゃない?」
「大丈夫、送るから」
誰に?
「だから、メールアドレス交換しよ?」
は?
大胆なことを言ってるけど全然、気にしてない翔くん。
「別にいいけど」
まぁ、断る理由もないし。
「ほんと?よっしゃー!」
なんで、そんな喜んでるのよ。
私も笑ってしまった。
交換した後、翔くんはものすごく嬉しそうだった。
私は携帯を向けて写真を撮る。
「何?」
「さっきのお返し」
私がそう言うと翔くんはと少し笑った。
翔くんの笑顔はなんだか眩しい。
そして、同じ帰り道を歩く。
「ねぇ、なんか食べない?」
翔くんはお腹が空いているのかそう提案してきた。
「別にいいけど」
そして、近くのコンビニでも買い物をする事になった。
「私、待ってるから」
そして、私は外で待つことにした。
翔くんがコンビニの中を歩いているのを確認して、携帯を取り出してさっきの翔くんの写真を確認する。
やっぱりいい顔してる。
かっこいい…
不意にそう思ってしまう。

ちょっと待って…
私、なんて?
だって、私がそんな事思うわけない。
きっと光の加減よ。
そうじゃなかったらあんな奴の事全然…
「お待たせ〜」
「別に待ってないけど」
「ごめん、これ1つしか買えなかった」
え?
それでいいんじゃないの?
まさか、私の分も買おうとしてた?
なんで?
「だから、半分こな?」
そう言って半分、渡されたのは温かく肉まんだった。
美味しそうに湯気が出てる。
それを2人で食べる。
「翔くん、お腹空かない?食べていいのに」
「いいよ。なんか悪いし」
そう言って拒絶された。
私も口に肉まんを運んだ。
温かくておいしい。
翔くんといるとなんだかなんでも幸せに感じる。
「じゃあ、せっちゃん」
「うん、バイバイ」