高校生活、初めての部活を終えた。
1年生は実力を試す10個のテストを受ける。
それが出来ないと発表の場には立てない。
精一杯頑張らなきゃ。
「あれ?せつな?」
「直斗くん」
「どうした?こんな時間まで」
「部活だよ」
「え?何部?」
「吹部」
直斗くんは目が点になった。
そりゃ、入らないって言ったんだから、しょうがない。
「やっぱり、やりたくなったの」
「そうか。すげえ」
そう言って玄関を出て、別方向だから直斗くんとは別れた。
だけど…
「いつまで、ついてくるのよ」
「えー?せつなちゃん酷いな。俺とせつなちゃんは同じ帰り道だろ?」
そう、いつも会わないけど同じ方向らしい。
「そりゃ、遅刻ギリギリのあんたとはこれからも二度とこの道で会う事ないでしょうね」
「もぉ、せつなちゃんはツンデレだな」
「うるさいわね、あんたにデレるような私じゃないわ」
「俺の前で泣いたのは誰ですか?」
う…
それを出されてはもう言葉が出ない。
「もぉ、うるさい!」
こんな奴の前で泣かなければ良かった…
怒って早足になった。
「せつなちゃん」
「何よ」
「俺は嬉しかったよ」
「え?」
「せつなちゃんが泣いてくれたってことは俺を認めてくれたんでしょ?」
確かに、そうなる…
悔しいけど。
「橋本翔…」
「ねぇ、その呼び方、辞めてよ」
「なんでよ、いいじゃない」
「えー。駄目駄目」
どうして、こんなに名前を呼ばせたいのよ。
「分かったわよ。橋本くん」
「えー?橋本くん?」
「何よ、不満?」
「うん」
じゃあなんと呼んでほしいのよ
「翔くんって呼んで」
「は⁉︎」
無理!
だってそんなのまるで付き合ってるみたいじゃない。
「いいじゃん」
「無理よ」
「言ってみたら意外にいいって」
そう言って詰め寄ってくる。
近い!
勢いに押されて、口が開く。
「翔…く、ん」
「早く慣れてね。せつなちゃん」
「ちょっと待って」
「何?」
「私の呼び方もそれじゃ不満だわ」
自分の名前が嫌いな私としてはそんなんじゃ嫌。
「分かったよ、せっちゃん」
せっちゃん?
まぁ、いいわ。
そうこう言ってるうちに私の家の前。
「じゃあ」
「バイバイ、せっちゃん」
そう言って無邪気に手を振る橋本…いや、翔くん。
なんか翔くんといると疲れない。
正直でいられる。
そんな気になる。