N+1dream

夜の散歩でこんな大きな出来事があるなんて……。嫌なことが続いた中に、良いことがあった。


最後に、もう一度お礼を言いたかったな。
きっと、もう二度と会うことは無い。


「待ってくれ!」


彼の声が聞こえた。
気付かれた!?結局、邪魔してしまった……!


理由はわからないけど逃げた。
怒られると思ったから?人と向き合いたくないから?


息が切れる。大分近づいてきた……!
体育が苦手な私はとうとう背中に触れられてしまう。


もう駄目だ。
諦めてふらふらと歩く。


「捕まえた。伝えたいことがあったんだ。大丈夫、逃げる必要はないぜ!」


「お前に後ろから話しかけられたら逃げるよー」


「ごめんねーこいつちょっと天然なのー。全く、女の子を怖がらせて」


勝手に怖がったのは私だ。普通の人なら逃げない。
臆病な私は、何を言われるかドキドキする。


「あのさ……一緒のクラスだよな……百日さん」


え?
私はクラス写真を思い浮かべた。えっと……あ。学校では髪型が違うけど、あの人か!名前覚えてないけど!
二学期なのに、わからなかった!


何だ、私って大したことなかった。何が順風満帆だ!
少し前の自分を叩きたくなった。恥ずかしくて目を固く閉じる。



「二学期に言うのもあれだが、これから仲良くしようぜ!家も近いっぽいし!」


私が待っていた言葉。
太陽の光を寒い夜に持ってきたみたいだ。


「いいの?私なんかがいても……」


「勿論OKだ」


「歓迎するよ!女子一人だったから、来てくれると嬉しいなー」


横にいる二人も優しかった。
そして、またあなたに手を差し伸べられてしまった。


やっぱり暖かい。私の手が冷たすぎるのか、ちょっと熱い!


「お兄ちゃん、帰ろー」


後ろにいた三人がお兄ちゃんの服の裾を引っ張る。


「そうだな。じゃ、また学校で!」


「うん……また明日!」


明日に希望を持てた。
大丈夫、私は明日からも一人じゃない。


勇気付けられた私は、怖くて見れなかったメッセージを見る。


百、今日は助けられなくてごめんね。茜には注意しとくよ!
明日からの昼休みは一緒にいよう!


田坂ちゃんからだった。怖がる必要なかったじゃん。安心して笑った。
気付かなかっただけで気にかけてくれる人は他にもいた。色々な人に助けられた。


私は一人じゃないし、寂しくない。