N+1dream

距離は縮まったかな?
この方法がずっと続くとは限らないし、何とか会話に持ち込んでグループの中に入れないかな?


派手に飾る山越さんたちの中に入るのは難しいし、性格だって正反対だ。クラスの女子の中心的なグループに私がいるのは場違いってわかってる。


それでも、この道しか残されていない。
駄目だったら、いつも通り一人でいるだけ。


体育の後の特別LHRでは、文化祭の作業を始めることになった。
作業と言ってもクラスのPR動画の内容を決めるだけ。それだけのことが、私には苦痛だった。


「じゃあ、チームを作って紙に内容を書いて提出ー」


行き場がある人は席を立っていく。
行き場の無い私は、この時間だけ使うことを許されたスマホで調べるふりをする。


皆、楽しそうだね。
もう一緒にまわる約束をしている人もいる。文化祭、楽しみたいな。何があるんだろう?


いや、私には関係のないこと。文化祭の出し物なんて、どうせ一人では楽しめない。


一人で歩くのって寂しいかな?
人混みの中を一人で突っ切る私を想像して、寂しく、悲しくなった。可哀想って後ろ指を指されるのかもしれない。


全ての人が動画のことを話している訳ではない。教室の装飾係は、青春というテーマに合った装飾を考えている。


人が足りないらしいので、私は係に入ることにした。そして、このままうやむやに出来ないかな……と考えていた。


消えかかった存在の私がいなくても、誰も気付かない。無理に他のグループに入れられるくらいなら消えた方がましだ。


こういうのに、仲良くもないしどんくさい私が入ったら足を引っ張るだけだ。


でも後から、何で入っていない!?と怒られるのも嫌だなあ。
それだけならまだしも、私をはぶいたなんて言い始めたら顰蹙を買う。


忘れていたんです、ごめんなさい、なんて、泣いて謝るのかな。
先生が後ろについて、私も入れてほしいと頭を下げるの?

断れないから、望まぬメンバーを受け入れるしか無い人は、苦笑している。
予定を変えることになって、内心ではあの子さえいなければと思っている。


そんなのは嫌だ。
何とか、優しそうな人のグループに頼み込んで……! 
重い腰を起こし、クラスの隅にいるグループを見据えた。
その大人しくて優しそうなグループも盛り上がっていて、入る余地は無いように見えた。


一人でいる私を可哀想に思って、誰か誘ってくれないかな?


現実は、そんなに甘くない。自分から行かなければいけないのはわかっているけど、重い腰は上がらない。
体が椅子に引っ付いているようだ。


その一時間、眉をひそめ、頬杖をついていた。