お客さんのお見送りが終わると、涼介君が近づいてきた。


手にはコーヒーカップを持っている。



「新作?」

「そう」

「いただきます」



コーヒーカップを受け取って、一口飲んだ。


んっ……やっぱ苦い。


でもいつもより飲みやすい。



「どう?」

「いつもより苦味が少ない気がする。 飲みやすいよ」

「本当!?」

「本当!」



こんなに目をキラキラさせてる涼介君初めて見た。


可愛い。



「クッキー焼いて持って来たんだ。 裏に置いてるから食べてね」

「お店終わってから一緒に食べよう。 俺がコーヒー用意するから、クッキー用意してよ」

「あはは、分かった。 任せて!」



きーちゃんは手のかかる弟みたいだけど、涼介君はしっかりしてるけど放っておけない弟って感じ。



「仲良いんだね」



終生のところに戻るとそう言われた。



「素直で純粋で可愛いよね」

「心はどんな中学生だった?」

「私は……普通の中学生だったよ」



気付けばニューヨークにいた。


気付けばうーちゃんがいた。


私の中身は空っぽだ。



「終生は? どんな中学生だった?」

「さぁ、もう忘れた」

「えぇ〜〜何それ! 人に聞いておきながら雑!」



好きになんてならない。


終生に彼女が居るって分かってよかった。


出会った時から気になってた。


でもそれはまだ恋じゃなくて、無かったことにできる想い。


私は誰も好きになっちゃいけない。


相手を傷つけてしまうかもしれないから……。