「………」
「………」
2人分の沈黙が重々しい雰囲気を醸し出していた。
今まで、僕達の間に会話が無くなるなんてことはなかった。
約半月前の僕は、一体どんな風に話しかけていたのだろう。
僕は、どんな話をしていただろうか。
今となっては、過去の会話シーンの記憶は断片化していて、最適な対処の仕方を探すことは出来ない。
それでも…なんとか言葉を繋げようとする。
だが、会話を発生させるためのたった三文字の言葉は、僕の意思とは反対に喉へ逃げて行く。
「………」
この世の終わりを見た後のようなその表情はとても暗過ぎた。
やっと継ぎ接いだ「あのさ」と言おうとした僕の意思は、その闇に呑まれて無くなってしまった。
この闇を切り裂き、麻那美の心に暖かな光をもたらす言葉がどうしたって思いつかなくて…また沈黙。

これで、何回目だろう。
ぼんやりと歩きながら思考を巡らせていると、何時の間にか僕と麻那美の家が目の前にあった。
2つの家は今の僕達のように、西に傾きつつある寡黙な太陽に、ただ照らされているだけである。