夏休みもとうとう最後の日を迎えた。
今年は麻那美のお母さんの葬式でバタバタし、夏祭りは花火大会などの地域の行事に参加することも出来なかった。

そして、ほぼ毎日あった高永家と瀬川家の晩餐会も開催されなくなってしまった。
あの日以来、麻那美も麻那美のお父さんも僕は見ていない。

「もう2度と、両家が触れ合える機会は来ないのかな」

ふと、僕の頭にそんな考えが浮かぶ。
流石に会うくらいは出来るだろうけど、当たり前にそこに居た、晩餐会は多分…。
そう思うと、何だか寂しい。
もう何年も前から両家の間で続いてたイベントである。
僕も嫌いじゃなかったあの行事から、辛辣な態度をあまり崩さない両親が楽しそうに世間話を交わしたり、麻那美との食後のテーブルゲームをする光景から…元気を貰っていたから。
開催しなくなってから、そう自覚した。機会が無くなってからやっと気付いた。
意外と僕は薄情者のようだ。
夏休みの宿題と明日の学校の用意もとっくに終わらせていたから、何かをする傍らではなく、自分のベッドの上にゴロンと転がって、天井の染みを見詰めながら延々と考え事をしていても問題はなかった。

だけど、僕は途中で考えるのをやめた。
玄関から、インターホンの音が聞こえたからだ。
時間は昼下がりと夕方の境目あたりの時間帯。
別に誰が来ても不思議ではない。
だが、僕は何となく誰か気になって、家には僕以外にお母さんも居たけど玄関へ向かった。部屋を出る為に開けっ放しにしたドアが、涼しめの夏風に吹かれて勢いよく閉まった。