ロクから、毎日電話がかかってきた。

話すことなんて、なかった。

毎日、バイト先で会って、21時に終わってから話して、その上電話なんて、もう、用事がなかった。

自転車で家まで送ってくれたが、1人で帰れるので、それも無用だった。

恋人というのは、こんなに窮屈なのだろうか。

ユウコやケイコも、毎日彼氏と電話していて、デートの後は家まで送ってもらっているという。

男性と付き合うのが初めてで、何も分からなかったが、毎日、疑問だった。

ロクが好きなものに、何も興味が湧かなかった。
初恋で、ジュウを好きになった時は、彼の好きなB’zの曲を聴きまくった。
ジュウが興味を持っているものに、興味が湧いた。

でも、ロクには、そうじゃない。

そもそも、何で、付き合ってるんだっけ。

元いじめられっ子にとって、彼氏持ちというのは、周りの評価を変える格好のステータスだった。

中学の時の、私をいじめていた子達も、私を見る目が変わった。

しいは、彼氏がいるもんね。勝ち組だよね。と言われた。

もう、いじめられなくなった。
それは、とても良かった。

それは、良かったんだけど、

勉強する時間が、減った。
成績が、下がった。

バイト先では、ロクと付き合っていることが知れ渡って、社員から色々言われた。

「ロクのことばかり考えているから、手が遅いんではないか。」
「若い子は、色恋沙汰で楽しくていいわね。」
「仕事しに来てるんじゃなくて、ロクに会いに来てるんだろう。」

私は、1度も、ロクを好きだと思ったことはない。
侮辱だった。仕事がしにくかった。

お金が貯められるなら、バイト先はどこでもいい。工場にこだわることはない。
バイトを、やめてしまった。