「アイタイ」

ポケベルのメッセージを、無視できなかった。
ロクが、格闘ゲームをしている。
その近くに、座っていた。

アイタイって言ったのに、何も話さないじゃん…

ロクは、何かに怒りをぶつけるみたいに、乱暴にゲーム機のボタンを連打していた。

…用がないなら帰りたいんだけど…

「コンビニ行ってくる。そこにいて。」

ロクが、ゲームセンターを出た。その時だった。

「自分、ロクの女?」
男の人に絡まれた。
「最初、イモっぽかったけど、なんか垢抜けたよな。」
臭い息がかかる。顔が近い。怖い。
「あいつと、どこまで進んでんの?」

やだ。怖い。
助けを呼びたいのに声が出ない。
逃げたいのに動けない。
私はなんでまた、ここに来たんだろう。
お父さんにも、怒られたじゃない。
もう、いい加減懲りようよ。

「無視すんなや、コラ」


助けて…パダ


その瞬間、胸を、鷲掴みにされた。


「!!!!!いや」

やっと声が出た。
そして、その男は、店を出て行った。

入れ替わりに、コンビニ袋を持ったロクが帰ってきた。

「なに、やってんの?」

「今、何させてたんだよ。俺には一本も手を触れさせない癖に、アッサリ他の男を誘惑しやがって」



「この、男好き。死ね。」

ドン!肩を押された。
私は、椅子から落ちた。


力の限りを尽くして、声を出した。

別れよう。
もう、会わない。


もっと早くに、別れてたら、こんな目に遭わなかったのに。
本当に、馬鹿だ。私は。