バリバリバリバリ

遠くからでもすぐにわかった。
ロクのバイクの音。
こちらに向かってきている。

父と母と祖母は、怪訝な顔をしていた。
彼らと目を合わせられなかった。

お前は、なんであんなやつと付き合ってる?

そう言いたげだったが、必死に堪えていたように思えた。

数分後にチャイムが鳴った。

「しい!俺、今日バイクできた!」
知ってる。

「マフラーに穴開けたら、音でかくなった。これで、走りに行くときに目立てる」
今は目立たないで下さい。

私の自転車二人乗りで、どこかに向かう。向かう場所はロクまかせ。
多分今日もバイク屋に向かう。
このルーチンワーク…何なんだろう。

ロクが好きなバイクに、私は全然興味がない。
バイト代はどんどんバイクの改造につぎ込み、外食するお金はないから、私はよく、ロクの家でご飯を食べた。

「あんた、またあの女連れてきた?あんな地味なの、どこがいいんだか。」
聞こえている。
彼の母と姉に、嫌われているのは知っていた。

ロクの姉のヨヨは、看護師の卵だった。
「ロク、お前、働け。甲斐性なし。ヨヨは情けないわ。」
と言いながら、ロクのことが結構好きで、ブラコンだった。
「新しいプリクラ撮った?よし、ヨヨにくれ。代わりにヨヨと内田のプリクラやる。」
「内田と?また?いらねーよ。」
「黙って受け取れ。しっかしお前の彼女は、毎回同じ顔だね。ちょっとは笑えっての。」
だから、聞こえているってば。