「ん…」
今まではそんなことなかったのに、禅が相手だと、私は感じやすいらしい。
みんなの前にもかかわらず、甘い声が出てしまった。
チュッと音を立てて唇が離れる。
絶対今顔真っ赤だ…。
だけど、そんなのお構い無しに式はどんどん進んでいく。
神父様の前で紙に署名をして、気づいたら退場になっていた。
禅が腕をスっと出してきて、私はその腕に自分の腕を通す。
そして、また音楽に合わせて、ゆっくり退場した。
そのまま、控え室に戻る。
だけど…
なんで禅も同じ部屋に居るの!?
「披露宴までは少し時間あるらしい…」
だからって…
禅には禅の控え室があるはずなのに…
それに時間があるからって、早めに着替えないといけない。
「にしても、さっきのはなんだ?」
…ん?
「さ、さっきって?」
何かしたかな?と思いながらも、一応聞いてみる。
「あ?キスした時、なんで人前であんな声出してんだよ…」
禅は少し不機嫌そうにそう言う。
「っ!!あれはっ!」
禅のせい…
私だって、あんな少し触れただけのキスで声が出るなんて思ってなかった。
そう言いたかったけど、言えなかった。
禅にキスされたから…
それも、深いやつ…
「んぁ…や…ふぁ…ぜ…」
「喋るな…」
離れたと思ったら、そう言われてまたすぐに唇が塞がれる。
離れた頃には、頭がぼーっとしていた。
「人前でエロい声出すの禁止な。あと、その顔も俺の前でしかするなよ?」
禅が悪い!
それに、
その顔って?
そう思ったけど、今は禅のキスと色気にやられて、力が出ない。



