〜1年前〜




「もう、お父さん!
次は忘れないでよね!」



そんな声が聞こえてきたのは、たまたま通った部屋からだった。



その時は、よく通る声だな…誰かの娘さんか…としか思っていなかった。



だけど、その声の相手が部屋から出てきて、俺と目が合うと、笑顔でペコッと頭を下げてきた。




その時から、俺の心臓がおかしくなり、うるさい鼓動が鳴り止まなかった。




いったい、誰の娘なのか気になって、部屋を覗いてみる。



あいつか?



何人か人がいたけど、すぐに分かった。



顔が似ていたから。




すぐに社長室にもどり、秘書にあの部署の名簿を出させる。



あいつは…





「樋口か…」


経理部門の課長だ。



成績も優秀な人材。



俺はドキドキなる心臓を押さえようとしながらも、高鳴る気持ちを隠せなかった。