「藍羅さん、来た時サインしなかった?」



…来た時?



「した…」


「それが、婚姻届だったんだよ。」



どうやら、知らなかったのは私だけらしい。


禅も、私の両親も知っていたみたいで、禅が教えてくれた。


きっと、内心では、こいつバカだなとか思ってるんだろうな…


でも、まだ出していないから、夫婦じゃ無いよね…?


「あ、婚姻届はさっき出してきたわよ?」


禅のお母様が爆弾を落とした。


後戻りはできないって事ね…



「じゃあ、お幸せに〜」

そう言って、私と禅を残して、両親は帰って行った。


「…!…い…!おい…!」


「ふぁい!」


どうして、こうなっているのか、把握出来なくて固まっていると、禅に呼ばれていた。


「さっさとしてくれる?遅いんだけど!」



「ご、ごめんなさい…」


小走りで、先に行っていた禅に追い付く。


「!?きゃっ!!」


着物の裾を踏んだ。


転ぶっと思って、ぎゅっと目をつぶる。


あれ?


痛くない?



「ほんと、危なっかしいやつ。」


禅が私のお腹に腕を回して支えながらそう言った。



「ありがとう…」


「いいから、行くぞ…」


そう言った禅は、今度は私が転ばない様に、ゆっくり歩いてくれた。


なんだ…優しい所もあるじゃん!


そんな、禅に胸がときめいた。