驚いたその表情が、日咲のどんな気持ちを表しているのかはわからない。




今度は俺の方が首を捻って、日咲を見つめていた。




日咲の表情は苦いような複雑な顔になり……最後は困ったように眉を下げた。





「……彼女?」




唇を小さく開いた日咲が躊躇いがちに呟いた言葉に、思わず吹き出しそうになった。




必死に笑いを堪える俺がよほど不可解だったのか、日咲の困った顔が段々しかめっ面に変わっていく。




「茜は……男の子だよ」



「男の子……?」




クスクスと笑う俺の隣で顔色をコロコロ変える日咲。




「だって……大好きって言うからっ」




また、唇を尖らせた日咲のしかめっ面が俺を恨めしげに睨んでる。




茜を女の子と勘違いしたのが、そんなに恥ずかしかったのか……?



それとも……大好きなんて言ったから?




「今は、日咲だよ」




まだ不満の表情が残る日咲の顔を見つめれば、日咲は怪訝そうに見つめ返してくる。




「……大好きなの。今は、日咲だから」