「でも、私は、お父さんやお兄ちゃんや、叔母さん、私の周りにいるたくさんの大人達に、本当に愛されて育った。
確かにちょっとした差別やいじめもあったけど、でも、何とか足を踏ん張って頑張った。
私のないものねだりなのかもしれないけど、この世界の中で、お母さんの愛情が最強で最高だと思うの。
だから、お母さんの愛をたっぷり受けて育ったミンジュンさんが、人間不信になっちゃダメだよ。
私はそう思うな…」
ミンジュンはきつく詠美を抱きしめた。
詠美の素直な言葉が、ミンジュンの心にダイレクトに入ってくる。
高く高く壁を築いて誰も寄せ付けなかった鉄の心は、詠美の言葉により音を立てて崩れようとしている。
「人を信じるって、信頼するって、俺にとっては難解な数式を解くより難しいよ…」
ミンジュンはそれが俺の生き方だとずっと虚勢を張って生きてきた。
今さら、何をどうすれば、この生き方を変えられるのか全く見当がつかない。
「簡単な事です…」
さっきまで泣いていた詠美は、大きな目を三日月にして笑っている。
「それは…
まずは、人を許すこと…
今日、ミスをしたスタッフを許してあげること。
自分が心を開かないと、相手のいい所は絶対に見えない。
まずは、ミンジュンさんが、相手の悪い所じゃなくて、いい所を探して見てあげなくちゃ」
ミンジュンは素直に詠美の言葉を聞いた。
人の言葉なんて聞いた事がなかった俺が、一体どうなったのか…?



