「何でそんなに涙が出るんだ…?」
詠美は作り笑顔で首を横に振った。
「羨ましいなって思っただけ…
私は子供の頃に母を亡くしたから…」
ミンジュンは愕然とした。
トラウマを抱えているのは俺だけじゃなかった。
確かに、母親が居ない子供は、それだけで悲壮感が漂っている。
可哀想、可哀想って、表に出さないように隠していても心の中ではそう思ってしまう。
特に、女の子はなおさらだ…
「何歳の時?」
俺は優しく聞いた。
事情は違えども片親がいないという事実は、俺の心も、きっと詠美の心も癒しを求めているはずだから。
「私が10歳の誕生日を迎えてすぐ…
癌が見つかって、あっという間だった」
詠美の記憶の中で、母を亡くした後の一年は、未だに闇がかかったような哀しみと寂しさで渦巻いている。
子供ながらに必死に生きてきた。
一番可哀想な対象として誰からもそう見られ、私を見る大人は全員が泣いた。
「これから母親が必要な時なのに…」って。
でも、不思議…
ミンジュンさんには話して聞かせたい。
私だって、いや、他にもたくさんの子どもが、そういう傷を抱えて生きていると。



