「鈴木さん、その人って、有名な方なんですか?」
鈴木は時計を見てキョロキョロしながら、一言こう言った。
「大スターだ」
「え? でも、元ですよね?」
「元でも今でも、きっと彼を知らない人はいないよ」
そう言うと鈴木さんは、詠美の手を取り行くぞと言って歩き出した。
詠美の心臓は変な風に暴れ出す。
一体これから何が起こるのか分からない不安と、大スターと言われるクライアントに会う楽しみで、夢の世界に足を踏み入れた気分だった。
詠美は空港の入口近くでその人達を待つ事にした。
鈴木さんが言うには、関係者という事がばれないようにとの事だ。
詠美はドキドキしながらその人達の到着を首を長くして待った。
すると、それまでただの通行人だと思っていた女性達の黄色い声が空港中に響く。
詠美が慌ててその声がする方に目をやると、サングラスをかけてキャップを目深にかぶった誰かがSPに囲まれて詠美に向かって歩いてくる。



