「君の書類を取引先の秘書に見せたら、採用の通知をもらえた。
でも、今、実物の森さんを見て、少し戸惑ってます」


詠美は訳が分からず、軽く微笑んで首を横に傾げた。


「データに登録されている森さんの写真と実物がちょっと違っているので…」


詠美は顔を赤くした。


「すみません、あの写真はダイエットをする前に撮ったもので、今より体重が10キロ近く重いんです…
あ、今日中にでも取り替えておきますので…」


実は、詠美は、去年一念発起して過酷なダイエットに取り組んだ。
誰にも知らせず進めたはずなのにこんな形でばれるなんて、自分の間抜けさと脇の甘さにげんなりした。


「いやいや、それは別にいいんだけど…
実はその韓国のクライアントの一つの条件に、通訳は地味で綺麗じゃない女性とあって…

本当にすまない… 
あの写真の印象で森さんを選んだんだけど、今日見たら全然綺麗だから戸惑ってます」


詠美はどう反応していいのか分からなかった。
端的に言うと、以前はブスだったけど今は美人ということ…?

綺麗という言葉が、詠美の心を喜びで満たした。


「でも、もう変更はできないからこのまま話は進めるつもりだけど、もし、相手先に容姿の事を聞かれたら、今のダイエットの話をしてもいい?

あ、もちろん、森さんが聞かれた場合でもそう話してほしい」