「お父さん、ヤバいよ……
凄い仕事が舞い込んだ~~~」


詠美はスマホを見る手がぶるぶる震える。

煎餅を焼いている職人さんと顔を見合わせた父が笑いながらこう言った。


「何、大好きな韓国アイドルの通訳か?」


興奮状態の詠美には父の言葉は届いていない。
スマホに映し出される仕事の内容を読むのが精一杯だった。


派遣会社からのメッセージは、まず最初に極秘事項という太文字から始まった。
そここから小さな文字でたくさんの概要が書いてある。

詠美がざっと読んで理解した事は、どうやら依頼人は韓国でも日本でも有名な元俳優だという事、その人がスポンサーとなる映画の日本人キャストのオーディションのため三か月程日本に滞在する事、通訳の仕事の他にも雑用を頼まれる事が多い事、この三か月間はその仕事に集中する事、他いろいろだった。


「お父さん、私、三か月はお店の手伝いできないかも… 大丈夫かな?」


詠美が父を見ると笑顔で頷いてくれた。


「お店はお前が居なくても何とかなるから…
その仕事、受けたいんだろ?」


詠美は大きく頷いた。